ずっと、好きなんだよ。
「大丈夫、だよ。大丈夫、なんだよ。だって、玲音くんは玲音くんなんだから」


「えっ...?」



言った後に気づいた。


私...名前で呼んじゃってた...。


でも、言ってしまったんだから、しょうがない。


言葉は取り返せないから危うくもあるけど、何より尊い。


私は諦めない。


自分の気持ちを言葉にすることが出来なくて失敗もしてとんだ間違いを犯したからこそ、今がある。


今、私にしか口に出来ない言の葉があるから。


伝える。



「何で悩んでるとか聞いても分かんないかもしれないから聞かないけど、でも、なんとなく辛いとか苦しいとか、私にもそういうのはあるから分かるよ。

周りが眩しすぎて私なんかちっぽけだ、夜空に浮かんでても目に見えないくらいの光しか放てない残念な星だって思ってる。

でも、なんか最近はそういう自分も悪くない、自分は自分だって思うようになった。

どれもこれも全部自分。自分だから仕方ないじゃんって。

そんなカッコ悪い自分でも情けない自分でも、必要とされてる時もある。

私にとってはそれが職場で、少しずつ力になれてるって感じられる瞬間があると純粋に嬉しいし、こんな私でもいて良かったって思える。

きっと、今の玲音くんにはそれがちょっと足りないんだと思う。うまく言えないけど、自分の存在を肯定出来る材料みたいなもの。

だから、私が...分けるよ」



私より澄んでキレイな瞳から大粒の涙が溢れ、頬を伝っていた。



「泣いてるの、初めて見た」


「っるせぇ。泣いてない...」


「泣いてる。もう、顔ぐちゃぐちゃだよ」


「泣いて...ない...。ゲホッゲホッ」



咳込む彼の...玲音くんの背中を擦りながら私は口を動かした。



「泣いてても笑ってても、玲音くんは玲音くん。どんな瞬間の玲音くんも玲音くんなんだよ。大丈夫。全部全部自分で、何をしたって、何を言ったって、間違いなんてない。たとえ、誰かが間違いだって言っても私が受け入れる。私が玲音くんを信じる。何度だって言う。大丈夫だって、信じてるって。だから...」


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