ずっと、好きなんだよ。
恐らく、だ。


由紀ちゃんの話を聞く限り、確かに私も越えてしまったんだと思う。


想いが通じ合って


一線を越えて


で、止まった。



「私が言えることでもないんだけど」


「いいよ。なんでも言って。奈和ちゃん大好き~」



この手の掛かる酔っ払いに何を言ってもって感じだけど、ま、一応言っておこう。


鼓膜が震えてシグナルが脳の一部まで届いて万が一にも記憶してくれるかもしれないし。



「停滞期、なんだよ。だからしょうがないと思う。慣れるくらいにまで心身ともに通わせられたならいいじゃん。もしこれでお互いにつまらなくなって、別の相手と浮気とかになって別れるなんてことになったら、きっとそれまでなんだろうし。私は2人はこのままでも大丈夫だって思ってる。そう...結婚、とか。まだ先だと思うけど、そこまで辿り着けるって勝手に信じちゃってる。だから由紀ちゃん、柴田さんのことちゃんと見てて。たまに喧嘩したっていいけど、それでもちゃんと...ちゃんと振り返って目合わせて。それだけは...約束して」



最後の方はほとんど独り言。


由紀ちゃんは気持ち良さそうにグースカ寝息を立てている。


私は...なんだか切なくなった。


胸が苦しくなってきた。



見てて。


見ててあげて。



私は見てたのに...


それでも気づけなかったから。


それで擦れ違って


交わりかけた赤い糸を


変にぐちゃぐちゃにしちゃったから。


それを今でも引き摺って。


カッコ悪い。


情けない。


分かってる。


分かってるけど、


言わせてほしい。


由紀ちゃんたちには同じ想いしてほしくないから。



握られたらその2倍握り返して。


抱き締められたら腕が千切れるくらいまで抱き締め返して。



恋とか愛とか


その定義も何もかもあやふやな私だけど、


あの日の温もりをまだ覚えているから


嫌なことあっても


辛いことあっても


歩けてる。



間違っても


繰り返さなければ。


間違っても


ちゃんと通じていれば。


どんな困難だって乗り越えられる。


そう信じたいから。


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