ずっと、好きなんだよ。
「あの...」



朽木と視線がぶつかる。


朽木はいつも真っ直ぐオレを見てくれる。


本当は...ダメだ。


この汚い感情をぶつけてはいけない。


だけど...



「どうしたの?」



朽木のその言葉が決壊を破った。



「朽木」



気づいたら口が動いていた。



「何?」



朽木には言えそうな気がして、


分かってくれそうな気がして、


無意識にオレの心は走り出してしまった。



「朽木はさ、自分が自分じゃないみたいな、自分が分からないみたいなこと、あるか?」


「えっ?それって風邪でってこと?」



オレは首を真横にふる。



「違う。ゲホッ。風邪引く前から、なんかずっと...分かんなくて。どうしたらいいか、分かんなくて。ほんと、真っ暗闇歩いてるみたいでさ。ずっとおんなじこと考えてぐるぐるぐるぐるしてたら、心のどっかがポキッて折れて。ゲホッゲホッ...。気づいたら風邪引いて熱出て倒れてた。自分でも、どうしちゃったんだろオレって感じでさ、正直お手上げなんだよ」



そう、だったんだ。


そんなこと、思ってたんだ、オレ。


まるで呼吸をするように今言葉になって感情が溢れた。


オレ、ほんとはこんなになるまで誰にも言えなくて、ずっと苦しかったんだ。


昔から、そうだった。


母さんにも


アネキにも言われていた。


頑張り過ぎだって。


誰にでも愛想よく振る舞って


いつも周りを気にして


周りのために一生懸命で


周りを笑わせて...。


それがオレの生き方で


でもそれが正しいのか分かんなくなって


自分の光がどんどん萎んでいって


周りが全部眩しく見えて


目を開けていられなくなって


どうしたらいいか、分かんないんだよ。


朽木...


ごめん。


心の中でなら言ってもいいか?


...助けてくれ。

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