ずっと、好きなんだよ。
「朽木っ...」



オレは朽木を抱き寄せた。



「玲音...くん...?」



無意識だった。


ただその温度を感じたいと思ってしまった。


ずっと苦しくて辛くて


マジで死ぬんじゃないかって怖くて。


そんなオレの


弱さを


醜さを


朽木は受け止めてくれた。


大丈夫だって、


信じてるって、


言ってくれた。


オレが今1番欲しかった言葉だった。


声を上げて泣いた。


朽木の小さくて、でも温かい手がオレの胸を叩く。


大丈夫、大丈夫、大丈夫...って


何度も何度も。


オレは次第に落ち着きを取り戻した。


腕の力を緩めると、さっきまでの体温が遠ざかった。


オレは恥ずかしながらも口にした。



「奈和...ありがと。よく、わかんねぇけど
ありがと」


「うん。どういたしまして」



朽木はオレに微笑みかけると、トレーを持って部屋を後にした。


オレも再びベッドに横になり、静かに目を閉じた。


聞こえてくる、水の音。


感じる、胸の鼓動。


オレはまた思い出した。


朽木奈和を好きだと自覚したあの日のことを。


あの時と今の気持ちはどこか似ている。

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