ずっと、好きなんだよ。
顔を上げる。


目が合う。


やっぱり、栄木さんは微笑んでいる。


なんでも許してくれちゃいそうな、


そんな優しい笑み。


それに甘えてはいけない。


私は口を開いた。



「栄木さんから電話をもらって...」


「うん」


「私...正直憂鬱でした。でもすぐに来てほしいって、今日じゃなきゃダメだって、話がしたいって言われて...そういうことなんだなって合点がいったんです。栄木さん、本当は...本当は私が高校1年の時にしたこと、気づいていたんじゃないですか?だって、今日は...」



栄木さんが大きく首を縦に振った。


さっきまでとは違う少し切なそうな含みのある笑みを浮かべる。


唇が動く。



「わたし...知ってた。誰かまでは分からなかったけど、身の回りのもの1日1個ずつ消えてること知ってたよ。

それをしてたのが朽木さんだってはっきり分かったのは、高校3年の今日。れおくんが朽木さんに鼻血事件のお礼するってわざわざわたしに断りに来た時、さすがのわたしもなんか変だなって思って。

実はね...着いていったんだ。そしたら校庭のあの木の下で2人が話してるのを聞いて...。わたしに悪いからって必死に隠そうとしてたのに、影からこそこそ探って...なんかほんと...ごめんね」


「違う。...違うよ。栄木さんが謝ることじゃない。私が悪いの。全部全部私のせい。

あの時の私はおかしくて...。栄木さんにはあって私にはないものを見つけては恨んで。自分のものにならないからって分かっててもバカみたいに嫉妬して...。

視界から消したいとかなんかもう...わけわかんないことばかり考えて、酷いことして...本当にごめんなさい。今まで謝りもしないで誤魔化して...本当にごめんなさい。...ごめん、なさい...」



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