ずっと、好きなんだよ。
両目から涙が溢れては止まらなかった。


必死にハンカチで口元をおさえ、周りに変な誤解をされないように取り繕った。



「朽木さん、泣かないで。大丈夫。だってわたしも朽木さんの気持ち分かるから」


「えっ?」


「わたしね、出逢った時からずっと...ずっとれおくんが好きだったんだ。一目惚れ...みたいな。転校初日に教卓の前で挨拶をした時、すっごい透き通った瞳で真っ直ぐこっちを見てくるからドキドキしちゃって。
...眩しかったんだ。その光の中でわたしも一緒に笑いたいって思ってた。だからね、朽木さんと仲良さそうに話してるの見ると辛かったし、羨ましかった」



私の頭は一気に混乱した。


濃い霧がかかって見えなくなる。


...えっ?


うそ?


どういうこと?


栄木さんが私を羨んでた...?



「だからね朽木さんが美豊の中等部に来ないって分かって内心ちょっと安心した。朽木さんを引き剥がしてわたしが一歩でもれおくんに近づけるって。

そう思いながら中学時代を過ごしてたら、運良く願いが叶ってれおくんのカノジョになれて...本当に嬉しかった。

高校で朽木さんと再会した時にはちょっとヒヤッともしたけど、れおくんは変わらず隣に居てくれて、朽木さんとはあの一件で疎遠になってホッとしてた」



そう...だったんだ...。


そんなこと、思ってたんだ。


ほんと、知らないことだらけだ。


勝手に想像して、栄木さんのことを雲の上の天使みたいに思ってたけど、人間だった。


私と同じように恋や愛で悩んで迷って一喜一憂する、女の子、だったんだ。


でも、それは分かったけど...なぜ?


なぜ、時が経った今なのだろう。


栄木さんの願いが叶って


私のことなんて見てみぬふりすることだって出来たはずなのに...。


そんな私の疑問を見透かしたのか、栄木さんは再び口を開いた。



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