ずっと、好きなんだよ。
空港からの帰り道。


大学と夏音の住む寮の最寄駅にあるコーヒーチェーン店に立ち寄った。


オレから誘ったのだが、何かを悟ったように夏音はいつにも増してカラッとした笑みを浮かべた。


そしていつもならドリンクバーを頼む夏音が今日は単品のアイスラテだけを注文した。


夏音の真似をするつもりはなかったが、自然と同じ物をと店員さんに伝えていた。


注文が届き、暑さで渇ききった喉を即座に潤すと、夏音は弾丸トークを始めた。


ホームステイ先のおじさんは陽気な人で一緒に釣りに行ったとか、


おばさんの手料理が毎食美味しくておかわりしまくっていたら2キロも太ったとか、


その子供と仲良くなって嬉しいとか、


他愛ない話を時計の針が1周するまでしていたと思う。


話し尽くした夏音は氷が溶けて薄まったドリンクを飲み干した。


次はオレの番だった。


夏音と話をするのに手汗がびっしょりになることなど今まで一度だって無かったのに、今日は汗まみれだ。


受験の時だってこんな風にならなかったのに、だ。


きっと、分かってるからだ。


ここが分岐点だって。


ここで逆方向に曲がったら二度と交わらないって。


それでも…


それでもやっぱり


ここで曲がるしかないんだ。


そう決めたのだから。


コップに手を伸ばす。


ごくごくと喉を鳴らす。


オレもドリンクを飲み干し、意を決して口を切った。
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