ずっと、好きなんだよ。
夏音の頬が緩んでいく。


怒ったり泣いたりすると勝手に想像していたのに、意外にも夏音は笑った。


その笑顔が…


痛いけど


綺麗だった。



「ずっと...ずっと待ってた」



微笑みながら残酷なことを言う夏音。


オレはただ耳を傾ける。



「いつ言われるかなって、なんで振ってくれないのかなぁって思ってたんだぁ。だって...れおくんの一番はわたしじゃないでしょ?」


「…ごめん。でもずっと夏音のことが好きだった。それは確かで…けどどうしてもアイツのことが忘れられなかった。今更だけど気づいたんだ。オレの一番は夏音じゃないって。本当にごめん」


「謝らなくていいよ。謝る理由がないもん。だって今まで楽しかったし、本当に幸せだったから。れおくんと一緒にいる時のわたし、大好きだったよ」



夏音は笑ってる。


ずっと笑ってる。


本当は泣きたいはずだ。


身勝手で自己中で最低なオレのことを恨みたいかもしれない。


それなのに、笑ってる。


そうさせてしまった自分に罪悪感を覚えてはいられない。


暗闇の中


迷って


探して


辿って


今に至ったのだから。


オレは悔いることを許されない。


夏音は表情を崩すことなく続けた。



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