ずっと、好きなんだよ。
夏音とお昼を一緒に食べ、午後の講義までのんびり過ごした後、オレは優等生らしく講義を受け、バイト先へと向かった。


高校時代入退院を繰り返していた母は今は家で内職を出来るまでに回復したが、正直なところそのお金だけでは私大に通えない。


オレは特待生試験を毎年受け、授業料は3分の1負担にまで抑え、残りはバイト代と奨学金で賄っている。


ってことで週4でバイトがあるわけだが、高校時代のコンビニバイトは引っ越しのために辞めざるを得なくなり、現在はファミレスのキッチンの仕事をしている。


無駄に人に干渉する嫌いがあるため、厨房内の人間と食品と向き合っていれさえすれば良いこの仕事は、体力的には多少キツいが、精神的にはラクでオレに合っている気がする。


夕方からのシフトは大学生も多く、バイト終わりに一杯なんてこともあって...。


そう、それで、だ。


それで昨日...



「香西くん」


「あっ、はい」


「手、止まってるよ。7番さんのハンバーグ出来た?」


「えっと...あと30秒で上がります」


「了解。じゃ、よろしくね」



バイトリーダーで唯一の主婦である牧野さんに注意された。


ったく、なんでこうなる。


そもそもアイツだって確信があるわけじゃねぇのに。


アイツが絡むとこう...ワケわかんなくなる。


自分が見えなくなる。



「すみません、出来ました。ホールの方、7番さんにお願いします」



急いでハンバーグを仕上げ、オレは一旦休憩スペースへと戻った。

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