ずっと、好きなんだよ。
「あれ?玲音もう上がり?」



別の大学のに通う同級生の速川雄馬が話しかけてきた。


高校時代からここでバイトをしている雄馬は家が近所らしくラストまで入っている。


オレもラストまでとはいかないがまだあがりではない。


今はちょっと


...頭を冷やす時間だ。



「いや。あと1時間ちょいある」


「なんだ?ミスでもしてしょげたか?」


「は?ちげーし。ちょっと喉渇いたから休憩しに来ただけ。今行く」



そう言って戻ろうとしたところで、ドアがコンコンと音を立てた。



「え?誰?」


「オレらの他もう来ないはずだけど」



確かにシフトに名前はなかったが、どうやら新人のようだった。


店長と一緒に入ってきたのは、オレらの1つ年下の女子大生だった。



「店長、新人さんが入るなら前もって教えて下さいよー」


「すまんすまん。一昨日決まったばかりでなぁ。ま、それは良いとして自己紹介を...」


「んじゃ、俺から。速川雄馬です。バイト歴4年のベテランなんで分かんないことあったらじゃんじゃん聞いちゃって下さい」


コミュ力高めの速川が颯爽と名乗り、オレに目配せしてくる。


自己紹介は久しぶりだ。


実に去年のゼミのオリエンテーション以来。


今年も同じメンツだしやらないと思ったら、まさかこんなところでやることになるとは思ってもいなかった。


自己紹介、なぁ...。


なんか、また地雷を踏まれた気分だ。


他の奴らには分かるわけがないので、オレの中で処理し、口を開いた。



「香西です。去年の今頃入ったんでちょうど1年くらいです。まぁ、分かんないことあれば大抵は雄馬に聞けば大丈夫なんで、オレは代打って感じで。よろしくお願いします」


「んだよ、代打って!お前のポテンシャルは4番並みだからな。謙遜すんなよ~」



と雄馬に絡まれたせいで忘れかけそうになったが、新人さんの名前は松本さんだった。


松本さんのお陰で一時的にではあるがオレは自分が休憩しに来た理由も忘れられた。

< 16 / 170 >

この作品をシェア

pagetop