ずっと、好きなんだよ。
飲みかけのカモミールティーを飲み干し、ふぅと一息つく。


大丈夫、


大丈夫、


大丈夫、だよ。


急ぐな、焦るな、奈和。


そう自分に言い聞かせていた、その時。



ーーピンポーン。



インターホンが鳴った。


今日は卒業式だから、その後先生方で飲み会があるから無理しなくていいって言ったのに...。


でも、来てくれたんだから、


それだけで十分だよ。


色んなもの、要らない。


まだ、いいから。


早く顔を見たい。


早く声が聞きたい。


私はその想いのまま、勢い良くドアを開けた。



「玲音くん、お疲れ様」


「奈和も、お疲れ。ごめん、遅くなって」


「いいよ。全然大丈夫。寒いでしょう?早く中入って」


「あ、うん。ありがとう」



そうやっていつも通り家に入る。


でも、なんか...


なんか、いつもと違うような...。


お互い疲れてるからそう思うのかな?


多少の違和感を感じつつも、私たちは同じ空間を共有し、同じ時間を過ごした。


私が高校生だった頃小学生だった子役が高校生のラブコメの主人公を演じているドラマを一緒に見ながらケーキを食べ、


増税のニュースを見ては世知辛さを痛感して、


そろそろ終電の時間だから帰るよね、と思い、口を開こうとしたら、


彼が先に話し出した。


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