ずっと、好きなんだよ。
「あのさ、奈和」


「ん?どうかした?」



なんて聞かなくても、どうかしていることくらい、見れば分かる。


ずっと感じていたこの違和感の正体が遂に分かる、のかな?


期待して視線を向けると、いつになく真っ直ぐに私を捉えていた。


この瞳からは逃れられない。


ううん、逃れたくない。


私は...息を呑んだ。


沈黙が、怖い。


この感じ...あの時と似てる。


付き合って下さいって、言われたあの時。


分かってたはずなのに鳩が豆鉄砲を食らったみたいにびっくりしちゃって、いつ答えを言おうか探ってたら、言い出し辛くなって...沈黙しちゃって。


結局はポチャンって蛇口の先の水滴が水面に落ちた時みたいに自然に言葉が溢れたんだよね。


それでその流れのまま...。


あの時みたいに、自然でいい。


普通にしていたら、いつか必ず光が見える。


そう、思う。


沈黙をそっと掻き分け、彼の言の葉が顔を覗かせた。



「改めて言わせて欲しい。誕生日おめでとう。それと...産まれてきてくれてありがとう」


「うん、どういたしまして」


「まだある。出逢ってくれてありがとう」


「うん」


「好きになってくれてありがとう」


「うん」


「好きで居続けてくれてありがとう」


「うん」


「付き合ってくれてありがとう」


「うん」


「一緒に居てくれてありがとう」


「うん」


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