ずっと、好きなんだよ。
毎月届く絵はがきは母からのもの。


父と離婚し、しばらく2人で父が残していった家に住んでいたのだけれど、一昨年の夏に母は祖母の介護のため家を売り、実家に帰った。


私も着いてこないかって言われたけれど、正社員として雇ってもらえたのだからおひさまーとで頑張ると決め、宮森に残る決断をした。


そして家賃3万5千円のアパートに引っ越してきて、この夏2年になるというわけ。


もう一人暮らしもだいぶ板についた。


孤独も慣れっこ。


毎日同じことを繰り返して、色のない日々を単調にやりきるだけ。


ほんと、それだけ、だ。



それでもたまに寂しくなる。


部屋に音が無いのが耐えられなくなる時がごく稀にあって、今日はそうみたい。


冷蔵庫に食料を放り投げると、エアコンとリモコンのスイッチをオンした。


テレビの向こうから聞こえてくる賑やかな声。


ついこの間までは大雨の話をしていたのに、今日の特集は花火大会、お祭り、海...。


そんな眩しいだけのイベントは元から私とは縁がなかったけど、それに対する憧れみたいなのもいつしか消えていた。


というより、諦めたのか。


私の生きる世界ではない、と。



「はぁ...」



ため息が出る。


エナドリを...と思って冷蔵庫に再び向かったけどやめた。


夕飯の準備に取りかかる。


早く食べて早く寝て朝を迎えよう。


早くこの残業地獄から解放される日が来ることを願おう。


そう誓ってなけなしの力を振り絞って手を動かした。

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