ずっと、好きなんだよ。
地獄の日々は夏の暑さに似ていた。


7月下旬から8月上旬でピークを迎え、早目に動いていたことが功を奏し、祭り1週間前はわりと落ち着いて過ごせた。


残暑とはいえ、ピーク時よりはだいぶ涼しくなった8月25日。


毎年恒例の宮森町夏祭りが開催された。



「いよいよ始まったね」


「準備、今年もすごい大変でしたよね。もう早く終わってほしいです」


「そんなこと言わないで。もっと楽しまなきゃ」


「楽しむ暇なんてありませんよ。大量のパンケーキ売らなきゃなんですから」


「ははっ。ま、それもそうだけど」



店長は相変わらず今日もカラッと元気にしてる。


真夏の太陽のような暑苦しさに、明らかに日陰属性の私は目眩がする。


自分が...というより美玲さんが考えてくれた映えを意識した屋台グルメであるパンケーキを売りさばくべく、私は11時から20時までフル稼働の予定だ。


店長の暑苦しさに負けてぶっ倒れてはいられないのだ。



「あ、そうだ。朝ごはん食べてないからオムパンケーキ1つ頂こうかな」


「ありがとうございます」


「礼には及ばないよ。俺は祭り全体の方にも顔を出さなきゃならなくてなかなか出店に注力できないから、せめてこれくらいはね」



具材を中央に盛り付け、折りたたむことでワンハンドで食べられるようにしたパンケーキは3種類ある。


少し塩味が強めの生地にオムレツとケチャップを挟んだオムパンケーキ、


鉄板で炒めた焼きそばを挟んだ焼きそばパンケーキ、


そして、デザート系のはちみつレモンパンケーキ。


お昼前ということもあり、お食事系が飛ぶように売れていく。


この後もペースを落とさずに売れてくれることを切に願いながら、休日出勤してくれたパートの方々と共に頑張ることを誓った。

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