ずっと、好きなんだよ。
佐伯エリアマネージャーに呼ばれて従業員の前に進み出たのは私の教育係の男性社員だった。
ん?
こんなの聞いてないんだけど。
内心思ったことは飲み込んで恐らく口にするであろう言葉を想像しているうちに彼が話し出した。
「皆様に特大サプライズです。4月1日付けで店長に就任致しました、柏木愛音(まおと)と申します。店長としてバリバリ働いて店舗全体、いや宮森町全体を盛り上げていきますので、従業員の皆様方もご協力よろしくお願いします」
「うそ~柏木くんが店長?!」
「いやいや、びっくりだわ。まさかまーくんがねぇ」
「これからもよろしくね、店長」
パートさん方が次々に感想を述べる中、私はぺこりと頭を下げるだけだった。
柏木先輩...いや、柏木店長は2日前までただの平社員だったのに。
なんて思いながらも、私は薄々感じていた。
この人は出世する人だろうと。
ちらっと柏木店長に視線を向けると、爽やかに微笑みかけられた。
嫌な予感に背筋が凍る。
そして、その予感は的中する。
「僕の挨拶はこれくらいにして、新しく入ったバイトさんもいるし、改めて自己紹介と今年度の抱負を語ってもらいましょうか。じゃあ、まずは2年目の社員、朽木さんから」
挨拶、か...。
学生時代のあの光景が急に目の前に広がった。
居ないはずの人間の
感じられないはずの視線を
私は感じてしまった。
本当は...
本当は、
自己紹介なんて...
なんて、思ってなかったよ。
私の名前を
刻み込んで
私の存在を
見つめて
そう...
そして、
私だけがキミの中に在ればいいって、
思ってたんだ。
あはは...。
...ばっかみたい。
私...
相当頭おかしくなってたな。
ふっと我に返ると、コーヒーを飲んだ後みたいに口の中に嫌な苦味がじわりと現れた。
それを唾と一緒に飲み込んで、私は口を開いた。
「従業員の皆様に改めて自己紹介させて頂きます。私の名前は朽木奈和です。今後もご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」
ん?
こんなの聞いてないんだけど。
内心思ったことは飲み込んで恐らく口にするであろう言葉を想像しているうちに彼が話し出した。
「皆様に特大サプライズです。4月1日付けで店長に就任致しました、柏木愛音(まおと)と申します。店長としてバリバリ働いて店舗全体、いや宮森町全体を盛り上げていきますので、従業員の皆様方もご協力よろしくお願いします」
「うそ~柏木くんが店長?!」
「いやいや、びっくりだわ。まさかまーくんがねぇ」
「これからもよろしくね、店長」
パートさん方が次々に感想を述べる中、私はぺこりと頭を下げるだけだった。
柏木先輩...いや、柏木店長は2日前までただの平社員だったのに。
なんて思いながらも、私は薄々感じていた。
この人は出世する人だろうと。
ちらっと柏木店長に視線を向けると、爽やかに微笑みかけられた。
嫌な予感に背筋が凍る。
そして、その予感は的中する。
「僕の挨拶はこれくらいにして、新しく入ったバイトさんもいるし、改めて自己紹介と今年度の抱負を語ってもらいましょうか。じゃあ、まずは2年目の社員、朽木さんから」
挨拶、か...。
学生時代のあの光景が急に目の前に広がった。
居ないはずの人間の
感じられないはずの視線を
私は感じてしまった。
本当は...
本当は、
自己紹介なんて...
なんて、思ってなかったよ。
私の名前を
刻み込んで
私の存在を
見つめて
そう...
そして、
私だけがキミの中に在ればいいって、
思ってたんだ。
あはは...。
...ばっかみたい。
私...
相当頭おかしくなってたな。
ふっと我に返ると、コーヒーを飲んだ後みたいに口の中に嫌な苦味がじわりと現れた。
それを唾と一緒に飲み込んで、私は口を開いた。
「従業員の皆様に改めて自己紹介させて頂きます。私の名前は朽木奈和です。今後もご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」