ずっと、好きなんだよ。
それから数分して汗だくの店長が駆けつけた。



「はぁはぁはぁ...すみません。遅れました。おひさまーと店長の柏木です」


「まったくぅ、遅いですよ!従業員をこんなになるまで働かせるとはどういうことですかっ!」


「夏音、それはいいから」


「良くないっ!れおくんは優し過ぎるの!労働関係は大事!弁護士のお勉強してるんだから分かるでしょ?言えることは言っとかないと。朽木さんはわたしたちの大切な友人です。過労死されたら困るんです!」



そう、だった。


そういう子だった。


栄木さんは、こういう子。


誰にでも平等に優しくて


大切だって恥ずかしげもなく口にしてくれるような、


すごく良い子。


だから、憎めない。


恨みたくても恨みきれなかった。


諦めたくなくても、やっぱり諦めるっていう選択を取るしかないと思わせる、


私の分まで幸せになってほしいと心から思える、


そんな子なんだ。



「すみませんでした。私の管理不足です。今回は助けて頂き誠にありがとうございます」



店長がペコペコと頭を下げる。


なんだか悪いことしちゃったな。


店長に後で謝らないと...。



「では、私が責任を持って奈和...いや、朽木さんの帰りのタクシーを手配しますので、お二人は帰って頂いて結構です。本当にありがとうございました」



栄木さんと彼は何かまだ言いたげな顔をしつつも去っていった。


暗くて良く見えなかったけど、たぶんカッコ良くなってた。


あの時より大人になってた。


栄木さんの留学がどうのこうので宮森に来たみたいだけど、そんなのどうでもいい。


何はともあれ、


また会えて、良かった。


顔を見られて、良かった。


倒れるくらいまで頑張って、良かった。


神様からのちょっとしたプレゼントかもしれない。


そう、思い込もう。
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