ずっと、好きなんだよ。
「な~おちゃん」



背後から声が聞こえた気がするが、私は帰る準備を続ける。


今日は久しぶりに親友と会うことになってるから急いで店を出なきゃならない。


誰のことも構ってられないんだ。



「奈和ちゃん」



また、だ。


いい加減諦めたらいいのに。


私ってなんでこう...めんどくさい人に目つけられるのかなぁ?


困ったもんだ。


無視し続けて従業員専用口を抜けよう。


私はさっとバッグを手に取り、駆け出した。



「えっ?...あ、ちょっと待って!」



...しつこい。



「あらあら、また追いかけっこ?懲りないわねぇ。頑張れ、まーくん」


「仲良しよねぇあの2人」


「ふふ。可愛い」



違うんです。


なんて、言えるわけもなく、私はただ無言で突破を試みた。


が、しかし、相手の方が体力もあるし、元バスケ部だかバレー部だか知らんけど足も速いわけだからあっという間に追い付かれてしまった。



「なんで無視するの?ちょっと話がしたかっただけなのに」


「私急いでるんです。せんぱ...て、店長の世間話に付き合っている暇は無いんです」


「ふふ...ははは!今先輩って...!ははは!やっぱり奈和ちゃんは面白いね」



笑ってる。


屈託の無い笑顔だ。


私は...


私はとことん、


こういうのに弱い。


眩しすぎて目を細めてしまうのに、


なんだかずっと見ていたくなる。


そんな笑顔だ。


こんな顔をする人は


この人と出逢うまでは


私史上たった1人しかいなかった。


忘れたくても


決して忘れることが出来ない。


何かのきっかけで


簡単によみがえってしまうあの気持ちに


蓋をして


鍵をかけて


どっかにぽいって投げ捨てた


はず、だったのに。


なんで何度も


何度も何度も復活してしまうんだろう。


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