ずっと、好きなんだよ。

玲音side

夏音から留学の話が出たのは、前期テスト明けのデートの時だった。



「あのね、れおくん、わたしねオーストラリアに短期留学することにしたの」


「短期留学?いつから?」


「えっとねぇ、9月3日から2週間。20日のオリエンテーションに間に合うように帰ってくる予定なんだ。その間はわたしいないから、れおくんきっと寂しいよね?」


「ま、まぁ...」


「ふふっ。今日は素直だ」



良い子、良い子ぉと言いながら頭を撫でられる。


それにしてもまさかだった。


夏音が自ら留学に行きたいなんて。


もしや...



「アネキに聞いたのか?」


「うん。美玲さんも学生の頃夏休みに行ったって聞いて。期間は短くても良い経験が出来るよって言われて、なら行かなきゃって思ってついこの間ゼミの教授に申請書を出したんだ。実はね、わたし翻訳家になりたいなって思ってるんだ」


「へぇ。すごいな」


「児童文学を分かりやすく翻訳して沢山の子供達に読んでもらいたい。そして、知らない世界を冒険して頭に収まりきらないくらいいっぱいの知識を得て大きく成長してほしい。その手助けがしたいの。だから今回の留学先ではいっぱい本読んで色々研究してくるっ!」


「すごいな、夏音は。良いと思う。その夢、応援する」


「ありがと。わたしもれおくんの弁護士になる夢応援してるから。お互いにこれからも頑張ろう!」



そう言って屈託なく夏音は笑う。


変わらない。


今も昔もずっと


夏音の笑顔は眩しい。


夏の太陽のように燦々と世界を照らす。


それが眩しくて


それを辿れば正しい気がして


それに導かれるようにオレは歩いている。


でも、ふと思うんだ。


このままで良いのか。


このままじゃ夏音に置いていかれる。


って。


オレの夢は、何だ?


賢いから弁護士になれるだろうって教師に言われて、じゃあ目指すか、みたいな流れで法学部を選んで進学して...。


それで良かったのか。


オレの本当にやりたいことって何だ?


何がしたかったんだ?



「おーい、れおくん大丈夫?テスト疲れ?」


「ごめん。ちょっとぼーっとしてた」


「テスト大変だったよねぇ。今日はゆっくりお家デートにしよっか?れおくん、何食べたい?」


「うーん...。夏音の作るもんならなんでも」


「うわ。それ1番困るやつ。ま、いいや。じゃあ今日はわたしが食べたいやつ作るね。楽しみに待ってて」


「うん」


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