ずっと、好きなんだよ。
テストが終わって時間的にはゆとりが出来たから、休んでいた10日分を取り返そうとオレはほぼ毎日バイトのシフトを入れていた。


そして、いつもより1時間長く働いていたある日のこと。


遂にオレは大きなミスを犯した。



「すみません。先ほど20番テーブルのお客様からハンバーグはまだですか?と聞かれたのですが...」



松本さんが申し訳なさそうにこちらを見ている。


20番の伝票を探すと...あった。


オレの足元に落ちていた...。



「松本さん、ごめん。オレだ...」


「あの...かれこれ1時間くらい待たれているそうなので...よろしくお願いします」



その言葉で一瞬にして場の空気が凍った。



「えっ?うそ!ちょっと待って。お客様に謝ってくる」



牧野さんが慌てて飛び出していく。


オレも牧野さんの後を追った。


そもそもこれはオレのミスなのに牧野さん1人に謝罪させるわけにはいかない。


...やべ。


オレ、大変なことしちまった...。


今まで多少のミスはあったものの、すぐに気づけて直せるレベルのミスだった。


なのに、今日は...。


どす黒く重たい嫌な感情に取り憑かれてからというもの、オレは日常のあらゆることをうまくこなせなくなって来ていた。


それに気づかないふりして...


いや、それを認めたくなくて


忘れ去ってしまいたくて


むやみやたらにわざとシフトを増やして。


そして、自分だけじゃなく、周りまで傷つけるんだ。


なんて、頭の中で色々考えていたって仕方がない。


今は誠実に謝ることだけ考えよう。


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