ずっと、好きなんだよ。
あれからあっという間に時は進み、8月25日。


年に1度、オレにとって大切な日がやって来た。


今日くらいは浮かれても良い。


朝から鼻歌を歌ったって良い。


朝から食べたいものだけを食べたって良い。


のかもしれないが、全部アネキに先を越された。



「母さん、なんでアネキあんな浮かれてんの?」


「いつも通りのデートよ。でも今日は懐かしい宮森町の夏祭りに行くからって言ってさっきからあんな調子なの」



宮森町の夏祭り...。


そういや、そうだったな。


いつも8月の下旬に夏の終わりを惜しむようにやるんだよな、あそこは。


確か4年前は1人で行ったな。


夏音が部活で忙しくて特に誘う相手もいなくてバイト帰りに寄ったんだった。


1人ベンチに座って虚しさに追いつかれないように夢中でたこ焼きを食べて、


帰ろうとしたらまさかの人物に出くわして...。



「お母さん、これも見る?結構載ってるよ」


「あら、ありがとう」



オレが寝ぼけ眼を擦っている横でアルバムを引っ張り出してきて鑑賞会を始めていた。



「あっ、いたいた!ねぇ、お母さんもこの子のこと覚えてるでしょ?」


「あぁ、この子ね。いっつも玲音のこと見ててくれた...確か名前は...」



ーー......。



「朽木奈和ちゃん」


「そうそう!お母さん、あったり~!で、その子とね6月くらいに偶然会って、今日祭りで出すパンケーキのレシピ一緒に考えたんだ~。どうなったんだか、気になって気になって」



まさか、アネキが朽木と会ってたなんて。


何で言ってくれなかったんだって思ったけど、アネキなりに気をつかって言わなかったんだろう。


オレと朽木の間で色々あったことを知らないにしてもアネキの勘で感じ取ることがあったんだろうから。



「ってことで、あたしはカレと待ち合わせしてるから行くね」



そう言い残すと、アネキはなぜかオレにウインクをお見舞いしてから意気揚々と玄関を飛び出して行った。

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