ずっと、好きなんだよ。
その直後だった。



「れおくーん!」



夏音の声が聞こえた。


夏音の足音が近付く。


朽木が起き上がる。



「大丈夫か?痛いところは?」


「ないよ。全然、大丈夫」


「なら、いいけど」



朽木の体温が遠ざかる。


どこか、痛む。


チクりと、身体の節々が痛むんだ。


カランコロンと軽快な音が近づくと痛みが増幅していく。


さっきから痛んだり弛緩したりする心、身体...。


自分のことなのに訳が分からなすぎる。


色んな意味で疲弊して脱力しているオレをよそに、夏音はきちんと役目を果たす。



「連絡つかないから直接行って見つけて来た。柏木さんっていう人、店長さんで間違いないよね?」


「はい、そうです。ありがとうございます、栄木さん」



オレがまたぼんやりしているうちに夏音が全てを解決してしまった。



「それにしても、どうしてここに?」


「えっとねぇ、わたしね、留学することになって、実家に持っていくもの取りに来たんだ。あ、そうそう。ちなみにね、わたし寮で暮らしてて...」



夏音は場を和ませるべく、1人でずっと喋っていた。

< 84 / 170 >

この作品をシェア

pagetop