ずっと、好きなんだよ。
それから数分して汗だくの店長が駆けつけた。



「はぁはぁはぁ...すみません。遅れました。おひさまーと店長の柏木です」


「まったくぅ、遅いですよ!従業員をこんなになるまで働かせるとはどういうことですかっ!」


「夏音、それはいいから」



咄嗟に飛びかかろうとする夏音の腕を抑えたが、振り払われた。



「良くないっ!れおくんは優し過ぎるの!労働関係は大事!弁護士のお勉強してるんだから分かるでしょ?言えることは言っとかないと。朽木さんはわたしたちの大切な友人です。過労死されたら困るんです!」



弁護士というパワーワードが出て、さらにオレは萎縮した。


なりたいのかも分からずに、


講義を受け続けて来たが、全部単位を取るため。


何のために勉強してるのか、正直それも分からない。


ほんと、全部真っ暗だ。


オレの世界は今...真っ暗なんだ。


自分のことで頭がいっぱいで話がすり抜けていく。


オレが意識を取り戻した時には店長がオレたちに向かって頭を下げていた。



「では、私が責任を持って奈和...いや、朽木さんの帰りのタクシーを手配しますので...」



耳がピクッと微動した。


奈和...


そう呼んでいるのか。


2人はそういう関係なのか。


ふ~ん...。


そう、だよな、


朽木だって、そういう人くらいいるよな。


オレだけ取り残されてるんだろう。


オレだけが真っ暗闇をバカ正直に真っ直ぐ歩いてるんだ。


どこまで行ったって光も出口も見えないのに。


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