ずっと、好きなんだよ。
「よっ...ゲホッゲホッ」


「大丈夫?」


「あぁ。それより、ごめんな。突然呼び出して...ゲホッゲホッ」


「無理して話さなくていいよ。それより、ここでこうしてても辛いだろうし、中入ろ。私...入っていい?」



彼がゲホッゲホッ咳き込みながら頷く。



「じゃあ、お邪魔します」



自ら聞いたものの、やはり緊張せずにはいられない。


だって、普段は家族もいるからいいけど、今は実質男性の一人暮らしだよ...。


こんなの初めてだっていうのに、それに加えて風邪という最悪の状況。


でも、私が動揺してたら、病人の彼に余計に気を遣わせそうだし、ここは普通を貫いて頑張ろう。


普通、普通、普通...。


心の中で呪文を唱え続け、なんとか居間までたどり着いた。


ここまでほぼ息をしていない。


ふぅ...。


ようやく一息つける。



「朽木」



名前を呼ばれてピクッとなる。


いかん、いかん。


普通、普通、普通...。


自然体、自然体...。


私は自分に言い聞かせてから、彼の方に視線を向けた。
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