ずっと、好きなんだよ。
「朽木、もしや...」


「あ、うん」



私は簡易的な小さなテーブルの真ん中にトレーごと置いた。


湯気が部屋中に良い香りをもたらす。



「うどんじゃん」


「しかも讃岐うどんだよ。まぁ、冷凍のやつだけど。まさか、嫌いになったりしてないよね?」


「嫌いになるわけねぇだろ。死ぬほど好きなんだから」


「ふふっ。命がけの恋、いや愛だね」


「わ、笑うな、バカ」



...懐かしい。


変わってないな。


変わらないとこもあって良かった。


私が大好きな笑顔は変わってない。



「ツッコミはいいから、早く食べな。ほら、冷めちゃうよ」


「分かった。んじゃあ、頂きます」



猫舌だから、何度もふぅふぅするのも変わってないし、


ずるずると啜るのも上手いし。


あの時と変わってなくて


私の知っている彼で


良かった...。


安心して鼻の奥がツンとする。



「うま...」


「なら良かった。まぁ、お店のには敵わないと思うけど」



私がそう言うと、彼は大きく首を横に振った。



「あそこのより旨い。なんだろうな...。良く分かんないけど、旨い」


「ふふ。きっと風邪で味覚やられてるからそう感じるだけだよ。絶対専門店の方が美味しいよ」


「かもな」


「うわ、ひど。上げて下げられた」


「なんだよ、自分で言っといて」


「ちょっと傷つきました」


「あっそ」


「やっぱりひど」


「酷くてけっこう。コケコッコー」



何、それ...。



「ふふっ。ふふ...あははっ。もう、お腹痛い...。あははっ。あはははっ...!」


「何がそんな面白いんだよ?ゲホッゲホッ。ほんと変だよな、朽木は...。ゲホッゲホッ」



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