カレカノごっこ。
「…あ、邪魔してごめんねー、続けて続けて」
2人の会話の邪魔はしたくない。
伊吹くんの隣の席にあるカバンを取って、すぐにその場を離れる。
教室から出ると、今まで無意識で止めていた息を思いっきり吸い込んだ。
なんでこんなに意識しちゃってるの…!
もう伊吹くんとはなんの関係もないんだから。
これからは普通のクラスメートに戻るんだから。
こんなことで動揺してたらいつまで経っても身が持たない。
そう分かってるのに…。
「”井上さん”か…」
知ってる。
伊吹くんは誰かが近くにいる時は、私を苗字で呼ぶこと。
2人きりの時しか名前で呼ばない。
分かってる。
でも今、伊吹くんに”井上さん”って呼ばれることが、ひどく悲しかった。