カレカノごっこ。
一気に現実世界に戻された私は、腰を上げた。
「渉、待たせてるから…」
「そうだね」
さすがに伊吹くんも悪いと思ったのか、引き留めてはこなかった。
放送室を出て、伊吹くんと一緒に廊下を歩く。
それだけでドキドキする。
私の手が隣に歩く伊吹の手と少しだけ当たって。
一瞬ドキッとして。
そのままギュッと手を握られる。
本当にこの男は、なんでこんなことが自然に出来ちゃうんだろう。
「ちょっと離して」
「えー?なんで?」
「誰かに見られたら困るでしょ?」
「全然?」
そこまで繋いでいたいのか。
そんなに手を繋いでいたいのか。
学校の玄関にいくと、渉がスマホを片手に待っていた。
渉が目に入った瞬間、伊吹くんは私の手をそっと離した。
あんなにも繋ぎたがっていたのに、離す時は一瞬だった。