カレカノごっこ。
渉は私たちを見つけて、一瞬笑顔になったあと、すぐに真顔になった。
「新奈、遅かったね」
「鍵、探すの手伝ってもらってたんだ」
伊吹くんはそう言って、放送室の鍵をポケットから出した。
「そうだったんだ」
「待たせて、ごめんね」
「うんん、大丈夫」
渉を待たせてまで、何やってるんだろう私は。
「じゃあ俺、職員室に鍵返してくるから」
「あ、うん。ばいばい」
「ばいばい」
伊吹くんはそのまま手をひらひらさせて、職員室の方に歩いて行った。
さっきはあんなにしつこかったのに。
帰る時はやっぱり一瞬だ。
「行こっか」
「うん…」