カレカノごっこ。



背中で聞こえた渉のその言葉に、心臓が跳ね上がった。

急すぎて。

まだ自分でも整理がついていなかったから。

だから渉の真っ直ぐな問いに、私は言葉をつまらせた。



「あいつって…」

「皆藤ってやつのこと」

「あぁ…」



今思うと、私の行動は分かりやすかったのかもしれない。

前も駅のホームで渉に会った時、伊吹くんのこと好きなのかって聞かれた。

渉に同じことを2回聞かれるくらいには、言動に出ていたのかもしれない。



あの時は私もすぐに否定できたのに。

困っちゃったな。

認めたくないのに。



「好きとかじゃないよ…」



もう、こう言うしかないって分かってる。

自分の気持ちに気が付いてしまった今でも。

こう言うしか…。

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