カレカノごっこ。

「そろそろ行こっか」



伊吹くんはそう言いながら立ち上がった。



「うん…」



ここで離れたらもう本当に最後なんだ。

あんなに自分から最後最後って言っておいて、こんなにも名残惜しくなるなんて。

なかなか立ち上がらない私を、伊吹くんは多分、不思議そうに見ている。

でも伊吹くんは何も言わなくて。

私も何も言えない。

時間だけが刻一刻とすぎていく。



「夜の海も神秘的でいいよね」



って何言っちゃってるんだろう。

時間稼ぎにしてはお粗末すぎる。



「そうだな」

「私、ちゃんと彼女っぽかった?」

「え?あ、うん。俺には勿体無いくらい、いい彼女だった」

「あはは、それは褒めすぎ」

「いい彼女だったよ」

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