カレカノごっこ。
渉は優しいトーンの声で、私の顔を覗き込んだ。
でもこんなこと渉に言えない。
それに水島くんにも誰にも言わないでって言われてる。
「本当に何もないって。帰ろう?」
私はそう言ってカバンを持って席を立った。
渉は不満そうな顔をしながら、その場から動かなかった。
「なんで何も言ってくれないの?」
「え…?」
「俺ってそんなに信用ない?」
「そんなんじゃ…」
「幼なじみとしてでいいから。困ったら頼ってよ…」
なんで渉がそんなに辛そうな顔するの…?
「実はね、友達の具合が悪いみたいで…心配で」
「そうだったんだ…」
「今日それ聞いたから、気になっちゃって。ごめんね」
「そっか…」
「うん…」
「お見舞いとか行かなくて大丈夫?」
「うん、大丈夫」
行こうにもどこに入院してるとか分からないし。
それに内緒にしてるってことは、来て欲しくないってことだよね。
「もしかして、その具合悪い友達って皆藤?」
「え、なんで…」