カレカノごっこ。
放課後。
私は帰る支度を済ませて渉のクラスへ向かう。
渉は私を見つけると、カバンに片付けていた筆記用具をそのまま置いて、私に近づいてきた。
「新奈がこっち来るなんて珍しくない?」
「あ、うん…」
「もうちょっと待ってて。今カバン持ってくるから」
「ちょっと待って」
私が渉と呼び止めると、渉はゆっくりと振り向く。
「今日は用事ができたから一緒に帰れない…」
「え?あ、そうなんだ?」
「ごめん」
どうしよう。
渉の目を見て話すことができない。
でも自分で決めたことだから。
ちゃんと渉に言わなきゃ。
「お見舞い、行ってくるね」
「…あぁ、そーゆーことか」
そう言って渉は、頭をかいた。
「分かった。言いにくかったよな。言ってくれてありがとう」
渉がお礼なんて言わなくていいのに…。
「あのね、今度ちゃんと渉と話したい」
私がそう言うと渉は目を丸めた。
そして少し眉毛を下げて笑った。
「うん。待ってる」