カレカノごっこ。
それからは学食以外でも、井上さんを見かけることが増えていった。
廊下ですれ違う時。
体育の時。
登下校の時。
気がつくと目で追っていた。
「やっぱ、あれ、彼氏だよな」
「なーに見てんの?」
「別にー」
放課後。
自分の教室から見える校門。
井上さんはいつも男子と一緒に下校していた。
率直に羨ましいと思った。
俺は遠くからただ井上さんの表情を見ることしかできない。
けどあの距離なら彼女が笑ったり怒ったり、いろんな表情を見ることができる。
たわいのない会話でふざけ合ったり笑い合ったりできる。
ただそれが羨ましかった。