カレカノごっこ。

ある日の放課後。

スマホをなくした俺は、教室まで探しに行った。

そこで井上さんが、教室に残っているのが目に入った。

心臓が大きく飛び跳ねた。

教室に入るのを躊躇したけれど、スマホないと困るし。

これはある意味チャンスかもと思った。

2人きりの空間になれば、沈黙の気まずさから井上さん相手でも喋れるかもと思った。

俺が教室の扉を開くと、井上さんは振り向いた。

井上さんが俺を見ている。



「あれ、井上さんだ。まだいたんだ?」



できるだけ自然に。

ただのクラスメイトとして。

そう思いながら、言葉を選ぶ。



スマホは教室にあった。

それをポケットにしまうと、井上さんはまだこっちを見ていた。



「日誌まだかかりそう?手伝おうか?」


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