カレカノごっこ。
「じゃあ、ちょっとお願いしたいことあるんだけど」
今しかないと思った。
今日を逃したら、また喋ることすら出来なくなると思った。
「───今から俺とデートしない?」
かなり強引だった気がする。
今思うと、なんであんなにしつこく誘えたのか分からない。
ただ、その時は必死だった。
でも、俺は普通の人とは違うから。
親しい関係になったら、病気のこと言わなくちゃいけない時が来るかもしれない。
それだけは嫌だった。
だから別に付き合ったりとか、そんなことまで望んではいなかった。
ただ、井上さんの隣で笑っていたかった。
俺の無理難題に、井上さんは動揺しながらも答えてくれていた。
俺の言葉で、彼女が次々に表情を変える。
それがすごく嬉しかった。
井上さんが俺の言葉に反応してくれることが嬉しすぎて、つい調子にのってしまう。
今まで誰にも出すことがなかった感情が、次々と溢れ出る。
もっともっと井上さんのいろんな表情が見たいって思った。