カレカノごっこ。

ずっとこのままでいたいなって思っていたら、点滴のエラー音が鳴って。

でも伊吹くんはそのまま動かなかった。



「なんか鳴ってるよ?」

「いつものことだから大丈夫」



って、大丈夫じゃないから鳴ってるんだよね?



「ほら、看護師さん呼ばなきゃ」

「もうちょっとだけ」



伊吹くんはすっかりいつもの伊吹くんに戻っていた。

でも外で看護師さんの声が聞こえて、すぐに布団から顔を出した。



廊下を通りかった看護師さんが音に気がついて入ってきたのだ。

看護師さんは手慣れて様子で、点滴を触って、「また鳴ったら教えてね」と言って出ていった。



「危なかったね」



そう言った伊吹くんは、なんだか嬉しそうで。

もう一度私に笑ってくる日が来るなんて思ってなかったから、すごく嬉しかった。

< 226 / 251 >

この作品をシェア

pagetop