カレカノごっこ。
「新奈のお弁当も食べたいし」
「げ。覚えたんだ」
料理は自信ないし、忘れてくれててよかったのに。
「忘れるわけないよ」
「…うん」
伊吹くんが私としたいことを語る度、胸がぎゅっと締め付けられる。
昔言った何気ない言葉も覚えていてくれた。
心が満たされていくのが分かる。
こんな感情が私にもあるんだって、伊吹くんのおかげで気がついた。
「俺、病気だと思って色々諦めてたけど、諦めなくていいんだなって新奈のかげで気がついたんだ」
「え?」
「だからもっと貪欲に生きようと思って」
「そっか」
私も伊吹くんのおかげで気づけたことたくさんあるよ。
伊吹くんのこと諦めないでよかった。
自分の気持ちに正直になれてよかった。
こんな目まぐるしい感情を抱くのは伊吹くんだけだよ。