カレカノごっこ。
それからは、ただぼーっとスクリーンを眺めるだけで、映画の内容なんてこれっぽっちも入ってこなかった。
代わりに伝わってくるのは伊吹くんの体温で。
右側半分が熱を帯びたかのように熱くて、ドキドキする。
きっと、これが好きな人だったら、もっとドキドキするんだろうな。
今でさえこんなにドキドキしてるのに、これ以上のドキドキって一体どうなちゃうんだろう。
いいな、彼氏。
いいな、デート。
今までは恋愛にあんまり興味を持てなかったけど、伊吹くんのおかげで、少しだけ良さが分かってきた気がする。
しばらくして伊吹くんが寝ているからか、それにつられて私も少しだけ眠くなってきた。
重たくなったまぶたを少し落とすと、伊吹くんの手と私の手が触れそうなくらい近くにあったことに気が付いた。
触れるか触れないかの距離。