カレカノごっこ。
結局伊吹くんは映画が終わるまで、目を開かなくて。
肩は占領されたまま。
手も繋がれたまま。
私は伊吹くんの密着のせいで、全然映画に集中できなかった。
「伊吹くん。映画終わったよ」
伊吹くんの体を揺らすと「もうちょっと」って言いながらまた目を閉じた。
本当に何なんだろう、この生き物は。
さすがにマイペースすぎる。
他に映画を見ていた人が次々に映画館から出ていく。
「ねー見て、カップルかな?」
「いいなー私も彼氏欲しい」
たぶん私と伊吹くんを見て言ったんだろう。
恥ずかしすぎて堪らない。
周りから見ると、カレカノに見えるのかな。
まあ、こんなに密着してれは勘違いされてもおかしくないか。
「さっきの人たち勘違いしてたね」
伊吹くんの声色はなんだか嬉しそうだった。
「ほら、次の映画始まっちゃうから」
「ちぇっ…。もっとくっついていたかったのにな」
伊吹くんはそう言って渋々立ち上がった。
なんで。
なんで、そんな事ばっかり言うの?