カレカノごっこ。
その声の方向に振り向くと、幼なじみの渉だった。
「こんな時間まで何やってんの?」
渉は私の横に並んでそう聞く。
伊吹くんのことを見ながら。
「映画、見てたんだよねー」
伊吹くんはその目線に答えるかのように明るく返事をする。
伊吹くんは、さっき何言いかけたんだろう。
気になる。
「ってかあんた誰?」
渉の声が駅のホームに響く。
渉、なんか疲れてる?
いつもの雰囲気と違う。
「俺は井上さんのクラスメートでーす」
伊吹くんはニコニコと渉に返事をしている。
井上さん。
クラスメート。
違わない。
何も間違ってないのに、すごく距離を感じる言い回しだった。