カレカノごっこ。

その声の方向に振り向くと、幼なじみの渉だった。



「こんな時間まで何やってんの?」



渉は私の横に並んでそう聞く。

伊吹くんのことを見ながら。



「映画、見てたんだよねー」



伊吹くんはその目線に答えるかのように明るく返事をする。

伊吹くんは、さっき何言いかけたんだろう。

気になる。



「ってかあんた誰?」



渉の声が駅のホームに響く。

渉、なんか疲れてる?

いつもの雰囲気と違う。



「俺は井上さんのクラスメートでーす」



伊吹くんはニコニコと渉に返事をしている。



井上さん。

クラスメート。

違わない。

何も間違ってないのに、すごく距離を感じる言い回しだった。

< 48 / 251 >

この作品をシェア

pagetop