カレカノごっこ。
「じゃ、幼なじみくんがいれば安心だね。また明日学校で」
そう言って伊吹くんは反対側の電車乗り場へ向かった。
帰りはやけにあっけなかった。
もっと一緒にいたいとか言ってたくせに。
あっさり帰り過ぎじゃない?
って違う違う。
伊吹くんはカレカノ気分を味わいたくて言ってるだけなんだって。
勘違いしちゃだめだよ。
いい加減学習しなきゃ。
伊吹くんの後姿を目で追うのをやめると渉と目が合う。
「新奈が男の人といるなんて珍しい」
「まあね、成り行きで」
やっぱり渉は疲れているように見える。
「もしかして好き、なの?」
「へっ?!ないない!絶対ないから!」
急に変なことを聞くから、びっくりして声が大きくなってしまう。
「新奈、動揺しすぎ」
そう言って渉は笑った。
くしゃっと笑う渉の笑顔はいつもの笑顔で少し安心した。