カレカノごっこ。
「でも、なんか見たことあるんだよな」
「伊吹くんのこと?まあ学校一緒だし見たことぐらいはあるんじゃない?」
「いや、学校以外で」
学校以外で?
渉は「いつだったっけ?」って考えてるけど思い出せないみたい。
「そう言えば、伊吹くんも渉のこと知ってたよ」
「え?」
「ほら渉、放課後よくうちのクラスに来てたじゃん。それで私と渉が付き合ってるって勘違いしてたみたい」
私は初めて伊吹くんが私に喋りかけてくれた時のことを思い出した。
不思議だな。
あの時伊吹くんが忘れものをしていなかったら、私たちはこんな関係になっていなかったかもしれない。
「…そのまま勘違いしててもよかったのに」
渉が喋り始めたと同時に電車が来て。
何を言ったのか私のは聞こえなかった。