カレカノごっこ。

「ちょっと彼氏に連絡していい?」

「どうぞどうぞ、私のことはお気になさらず」



桃々はスマホを取り出して文字を打っている。

ふと顔をあげると伊吹くんと目が合った。

今が言うチャンス?

そう思っていると、伊吹くんは何も言わずに私の席から立った。

これって、私に気が付いて私に席を譲ってくれたってことだよね?

伊吹くんが自分の席に戻るのを確認して、私は借りていた席から立ち上がる。

その時、私の耳元で声がした。





「教室でもよろしくね」





伊吹くんの声がはっきり聞こえた。

だけど、周りは喋ることに夢中で、桃々もスマホを打つのに集中してて、たぶんその声に気が付いたのは私だけ。

伊吹くんと目が合うと伊吹くんは不敵に笑った。




…教室でもカレカノごっこしようとしてる?



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