カレカノごっこ。
「やば、もうこんな時間!」
班の1人が時計を見て、声を上げる。
気がつくと集合する時間がきていて、急いで水族館の出入り口に向かった。
班ごとに整列して、先生の話を聞く。
私はブレスレットの付けられた腕を、長袖の上からぎゅっと握る。
なんか、伊吹くんと秘密を共有しているみたいで、謎にドキドキする。
きっと今の私は感覚が麻痺してるんだ。
いやだって、仕方ないじゃん。
伊吹くんに、あんなことされたら惚れない女子なんていないよ?!
って心の中で言い訳をしてみる。
この気持ちは多分一時的なもの。
頭ではちゃんと分かってるから。
このドキドキが収まるまでだから…。
私は目の前にいる伊吹くんの後ろ姿を、まじまじと眺めた。
伊吹くんのブレスレットも長袖で隠れてる。
そういえば、伊吹くんの後ろ姿ってあんまり見たことなかったかも。
サラサラの髪が風になびいて、いい香りが私まで届く。
この香り。
映画館の時のことを思い出すなー。