【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
そして20分ほどかけて階段を登り切り、開けた場所に出た。
「着いた!」
小坂が解放感に満ちた声を上げる。
そこは少し寂れた無人の神社だった。
神社は街を一望できる高台にあり、まわりに高い建物がないから花火の全景を見られる絶好のスポットだ。
中心地から離れ少し奥まったところにあるからか、人もまばらだ。
しゃがんで小坂を地面に下ろすと、「大丈夫?」と小坂が俺の顔を覗き込んできた。
「ああ、全然平気。それにしてもよくこんな場所知ってたな」
「ふふ。でしょ?」
笑みを交わしたその時。
ドンッと地鳴りのような音ののち、眩しい光が街を照らし出した。
花火の打ち上げ時間になったらしい。
次から次へと花火が夜空に咲いていく。
大気を震わせる太鼓のような低音が、足の底から体の芯まで響いてくる。
花火は、どうしてこれほどまでに力強く咲き誇れるのだろう。
ぱっと派手に咲いて、数十秒ともたずにその命を終える。
儚いけれど、その命の存在感は鮮烈だ。