【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
「うわぁ……」
隣で小坂が感嘆の声を漏らす。
「綺麗だね、榊くん」
――「ああ」
そう返事をしようとして、隣の小坂に視線を移した俺は、思わずはっと息をのんでいた。
出掛かった声が喉の奥に引っ込む。
花火が打ちあがる轟音が遠ざかっていく。
それは、そこにあった小坂の笑顔があまりに綺麗だったから。
その笑顔があるだけでこの世界も悪くないと救われてしまうくらい、愛おしくてたまらない。
愛おしさと共に胸に湧いた、温かく鮮烈な感情。
その感情の名はすぐに見つかった。
――ああ、俺は、小坂が好きだ。
落ちてしまったんだ、恋に。
どうしようもないほど心が震える。
芽生えたての感情が胸の中でどんどん膨らんでいく。
彼女の存在が、いつの間にか俺の中でどうしようもないくらいに大きくなっていた。
今気づいたはずなのに、ずっとそこにあったかのような感覚だ。
小坂は鮮やかな火の光に照らされて無邪気に笑っている。
けれど俺の方は、さっきの笑顔が目に焼きついて、心に深く刻み込まれて、離れない。
なぜだか無性に泣きたくなった。
目の奥がじんと痛み、もう一度空に視線を移せば、ぼやけた視界の中で花火が大輪の花を咲かせていた。