【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
*
花火が終わると、俺たちは駅へ向かった。
乗り込んだ車両は降車する人が多く、ふたりで並んでシートの端っこに座ることができた。
夜も更けて、電車を真っ暗な闇が包み込んでいる。
電車に揺られながら今日一日を思い返す。
なんて充実し幸せな日だっただろう。
絶望し死をも覚悟した翌日が、こんなにも満たされた一日だったなんて。
明日はなにが起こるかわからないものだ。
胸元で輝くペンダントに視線を落とせば、勝手に頬が緩みそうになって下唇を噛みしめる。
小坂にはもらってばかり。
目に見える宝物と、目には見えない宝物とがどんどん増えていく。
俺は隣の小坂に視線を移す。
「疲れたか?」
はしゃいでいたし、一日中草履できっと疲れただろうに、小坂は疲れを見せず笑顔を絶やさなかった。
「ううん、全然」
首を横に振って笑う小坂。
けれどしゅるしゅると力が抜けるように、眉尻が下がる。
「なんて。本当はちょっと疲れたかな。ねぇ、寄りかかってもいい?」
「ああ」
頷けば、小坂が頭を倒し、こてんと俺の肩に寄りかかってきた。
左肩にかかるわずかな重みと温もりが愛おしい。