【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
小坂がじんわり染み入るような声で呟く。
「花火、綺麗だったなぁ」
「そうだな」
あんまり……というか、まったく集中できなかったけど。
「今日が終わっちゃうね。ずっとこうしていたいな」
それは、耳を澄まさなければ電車の音にかき消されてしまうほどの小さな声だった。
いつだって前向きな小坂から、そんな言葉が出たのが意外で、俺は視線を落とす。
けれどここからでは、ゆっくり瞬いている長い睫毛しか見えない。
「え?」
「時を止める力があればいいのに」
電車の走行音やがやがやとした喧噪が立ち消え、まるで小坂の声しか耳に届かなくなったような、そんな感覚があった。