【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ

小坂はすぐにはっとしたみたいに体を起こして、俺を見た。

やってしまったというような苦笑を滲ませて。


「ごめん。花火を見てちょっと感傷的になっちゃった」


それから小坂はずいっと前のめりになるように、俺に顔を寄せてきた。

その顔にはもう、さっきまでのしんみりとした影の気配はどこにもない。


「榊くんはどんな力がほしい?」

「俺は……どんな時も小坂を笑顔にできる力がほしい」


考えるより先に、声が出た。

声になって初めて、それが俺の本心なのだとすとんと胸に落ち着いた。

たった今のように小坂がうまく笑えない時、小坂の上に降りしきる雨から守る傘になりたい。


すると小坂は睫毛を伏せて、ふいっと目をそらしながら文句を言うように呟く。


「……榊くんの天然大魔神め」


不機嫌そうな表情をしているけれど、怒っているわけではないとすぐわかる。

なぜならその顔がりんごのように赤くなっていたから。

それに気づいた途端、胸の中がくすぐったくなる。


好きだと自覚した途端、小坂の一挙手一投足が心臓に悪い。

惚れた弱みとよく聞くけれど、まさにそれだ。

俺はきっとこれからも小坂には敵わない。





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