【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ

「小坂のおかげで生きてるのも悪くないって思えたんだ。だから……来年の花火大会も、小坂と一緒に行きたい」


こんなふうに未来のことを考えられるようになったのも、全部小坂のおかげだ。


その時、ふと背中に温もりが重なった。

後ろから小坂が抱きついてきたのだと気づくには、そう時間はかからなかった。

突然の事態に心臓が早鐘を打つ。けれど。


「……振り返っちゃだめだよ」


背後から聞こえてきた声に、俺ははっと息を止めていた。

その声がか細く、そして濡れていたから。


小坂が今にも消えてしまいそうな、そんな一抹の不安が生まれる。

生きている限り時間はまだまだある。

それなのに時々小坂には、まるでタイムリミットが差し迫っているんじゃないかと思う時がある。

一瞬一瞬の時間を惜しむような素振りが見え隠れからだろうか。

明日の話をしようと俺を救ってくれたのは、他のだれでもない、小坂なのに。


そんな小坂になにを言ってやればいいのかわからなくて、俺はなにも言えず、腰に回された小坂の小さな手にそっと自分の手のひらを重ねることしかできなかった。





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