【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
◆ まどろみ
まるで夢のように目まぐるしい一日だった。
自殺をしようと思い起こしたかと思えば、呆気なく未遂に終わり、いきなり現れた女と不思議な約束をした。
とは言え彼女とは面識がなく、どこの高校生かもわからない。
あるいは高校生でもないかもしれない。
そんな素性をまったく知らない彼女とは連絡先だって交換したわけでもないから、また会える可能性なんてほぼゼロに等しい。
なにを根拠にあんなことを言ったのかわからない。
けれど、彼女の白いハンカチをスクールバックに忍ばせたのは、念のためだ。きっと。
翌日。眠る俺を揺り起こすように、瞼を朝陽が刺激する。
朝の到来を覚醒しない頭で認識した。
またいつもと代わり映えない、消化するだけの無意味な一日が訪れた。
朝は嫌いだ。
どんな夜にも無条件に朝はついてきて、俺を世界に置き去りにする。
目を覚ますことなく夜の中にいつまでも閉じこもっていたいと、何度そう思ったことだろう。
緩慢な動きで制服に着替え、高校に向かう。
家に閉じこもっていたいけれど、それはさらに疲弊することだということだと充分わかっていた。
行かなければ両親がとやかく小言を言われるだろうし、サボろうにも適当な場所なんてない。
今日もまた心を無にして時間を消費する。それだけだ。